適応症について
早産児について
早産児とは
おなか(子宮)の中にいた期間が37週未満の赤ちゃんを早産児といいます。赤ちゃんの身体は、お母さんのおなかの中に40週前後いることで外の世界にでてくる準備が整います。しかし、早産児はその準備の途中で出生してしまうため、体温調節や呼吸、消化機能など多くの機能が未熟なことがあり、とくに出生直後は、医療的なサポートが不可欠になります。
早産児の発達や身体の特徴を理解し、退院後も引き続き赤ちゃんの状態に気を配ることが大切です。
脳・感覚器
妊娠の初期から脳などの神経系器官はつくられ始めますが、予定どおりに出生した赤ちゃんでも脳はまだ成熟していません。早く生まれた赤ちゃんでは、脳や感覚器の発達が未熟です。
呼吸器(肺)
赤ちゃんの肺は34週くらいになると空気での呼吸に適応できる程度に成熟します。しかし、赤ちゃんの肺は40週で出生したとしてもまだ発達の途中の段階にあります。
そのため、赤ちゃんは早産であるほど呼吸器が未熟な状態で出生します。
循環器(心臓)・血液
赤ちゃんはおなかの中にいるときはお母さんから胎盤で酸素を受けとり、出生後は自分の肺から酸素をとり入れるようになります。そのため、出生の前と後では心臓や血管のしくみが変化します。早く生まれると、循環の適応に時間がかかり、心筋(心臓の筋肉)や血管が未熟なために血圧が低下しやすくなります。
免疫
赤ちゃんは身体の中に細菌やウイルスが入ってきたときに防御するためのしくみ(免疫)が未発達な状態です。その上、早く生まれた赤ちゃんでは、お母さんから免疫の主役である「抗体*」を十分に受け取っていないため、さらに防御する力が弱くなっています。
「抗体」のほとんどは、妊娠36週以降に赤ちゃんに運ばれます。
RSウイルス感染症も新生児で重症化しやすい感染症のひとつで、とくに肺が未熟で抗体が少ない早産児でかかりやすいことが知られています。
*抗体:抗原(抗体に対してウイルスや細菌などの異物を抗原という)が侵入してきたときに体内でつくられるたん白質で、ウイルスに結びつき、ウイルスが体内で増殖するのを防ぐ働きをします。
皮膚
赤ちゃんの皮膚は皮下脂肪が少なく、水分を通しやすいので、細菌などの病原体に対する防御の力も弱いです。早く生まれるほど赤ちゃんの皮膚はうすく、水分を体の中にとどめる力が弱いため、水分が蒸発することで体温をうばわれます。
こうしたことから、在胎期間が28週以下で12ヵ月齢以下の赤ちゃんや、在胎期間が29〜35週以下で6ヵ月齢以下の赤ちゃんには、一般的な感染症予防対策に加えてRSウイルス感染症の重症化を抑制するお薬(シナジス)の注射が考慮されます。